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 Q&A


ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
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第42回 ビジネスモデルの成功と破壊的イノベーション


 2017年1月23日夕方、産経新聞本社ビルの一室にて、21世紀ビジネスモデル研究会主催・大手町経営者クラブが後援の「2017年新春特別講演」として、「ビジネスモデルの成功には破壊的イノベーションが必要か」を題とする講演をさせて頂いた。

 今日、事業環境は激変し、企業間の競争は製品や技術というより「ビジネスモデル」へとシフト。しかし、ビジネスモデルとは何か、についての議論は百家争鳴にあり、実務家から見れば必ずしも明白ではない。そこで、筆者は、近年のもう一つのキーワード「イノベーション」との関係も意識しつつ、ビジネスモデルとは何か、それは何によって、どのように進化してきているのか、いま、どのような方向に向かうと考えられるのか、などについて、ビジネスモデルとイノベーションの原点に戻って、多彩な事例を踏まえて、かかる基本的考え方や実践的視点を提示した。

 具体的には、まずは「1.ビジネスモデルの基本」と「2.イノベーションの基本」について確認し、次に「3.ビジネスモデルの進化及び今後の方向」について探ってみようという流れである。

 ビジネスモデルというのは何か、@何等かの構造を持つビジネスの仕組み。不動産ビジネス、コンテンツビジネス、介護ビジネスなどはもちろん規模も特性も違いますが、いずれもそれなりのビジネス構造を有しています。A顧客価値の発見か創出はBM の原点。ビジネスモデルを考える際に、どのように真の顧客価値を提案できるかが原点です。B健全で実現可能な収益モデルの存在。これは皆さんにとっては申し上げることもなく、研究レベルで言うと、最も成果の乏しいところ。Cサブモデル間の協働や進化が不可欠、である。

                
   
                

 よく、身近なイノベーション事例として言われているのは、例えば、キーボードをなくしたことで電話を再発明したiPhone とか、友人の友人を可視化したことで世界を小さくしたfacebook とか、徹底的な消費者の立場に立って作られたと評されるAKB48 とかがある。

 しかし、これらの事例はあまりにも有名でして、ビジネスモデル、マーケティング、ブランディングなどの分野でもよく事例として取り上げられて紹介されているので、イノベーションという観点から見た場合は何なのか、必ずしも明示されているとは言えない。日本では、イノベーションとは何か、いまでも時に「技術革新」と訳されたケースがあるが、これは大きな誤解、いや、誤解を招いた誤訳である。

 すなわち、イノベーションとは、技術に限らず、物事の「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。言い換えれば、技術(革新)に限らず、改良ではなく、革新であること。既存の延長線上ではなく、新軌道を創り出すこと。連続的ではなく、非連続的である。いまの世の中、いろいろなイノベーションを用いた表現が存在し、多すぎてよく分からなくなってきていると感じる時もあるが、@新結合イノベーション、A破壊的イノベーション、Bオープンイノベーション、Cユーザー・イノベーション、Dリバース・イノベーションに留意するのが大事であろう。

 そこで、「破壊的イノベーション」とは、名著『イノベーションのジレンマ』の著者で広く知られるクリステンセン教授によって具体的に提唱され、「持続的イノベーション」に対した概念である。破壊的イノベーションのポイントとしては、@破壊的技術、A破壊的イノベーション法則、B破壊的イノベーターの戦略という三つがある。結論から述べると、「破壊的イノベーションが不可欠」というまではいえないと思うが、ビジネスモデル の成功には何かのイノベーションが重要である、と主張できる。


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