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 Q&A


ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
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第5回 コンテンツからくら寿司まで、様々なビジネスモデル


 2011年11月18日夜7時、立教大学大学院独立研究科のある教室で、筆者が担当するシードマネジメント特講(ビジネスモデル論入門)を履修している社会人大学院生は、各自の調査研究による第2回目のプレゼンテーションが始まった。

 幕を開いたのは長年メーカーで研究開発や管理業務に取り組む50代の院生で、テーマは「日本高純度化学(株)のビジネスモデル」、締めを飾ったのは音楽コンテンツ業界に注力する30代の院生で、「Think of White Space 〜Business model of NICONICODOUGA〜」であった。今回は8名の方の発表なので、途中一度休憩時間を設け、本来ならば21時40分頃に終了のはずだったが、活発な質疑応答で、結局1時間も延長してしまった。しかし、皆さんの満面の笑顔からは有意義な時間を過ごした、という気持ちが見えるように感じた。

 他の発表テーマとしては、「クリーンエネルギー事業のビジネスモデル」、「北海道バイオベンチャー『イーベック』のビジネスモデル」、「コンテンツベンチャーのビジネスモデル」、「日本のIT企業と大学による産学連携ビジネスモデル」等幅広い分野であったが、若干難しいのではないかと思われる内容も含まれたことから、前半に20代の院生に「スターバックスのビジネスモデル」で登場してもらい、後半に30代前半の院生に「くら寿司のビジネスモデル」で出てもらうなど、事前に発表のプログラムを少し工夫した。

      

 このビジネスモデル論入門では講義概要を次のように紹介している。

 「本特講では、『ビジネスモデル論入門』を主題にし、ビジネスモデルをめぐる主な議論や事例を紹介し、ビジネスモデルの本質や実学的な視点を提起するとともに、とくに技術をベースにした商品化や事業化を念頭に置いた、ビジネスモデルの実学的な構築ポイントについて検討する。

 新聞、雑誌、書籍、セミナー等において、一時期『ビジネスモデル』よりも頻繁に登場していた『ビジネスモデル特許』という言葉は、多くの方に想起されるキーワードの一つであろう。そして米国と同様、わが国においても一時期あれほど沸いていた『ビジネスモデル特許』の議論は徐々に下火になり、さらに『ビジネスモデル特許はそもそも無用』というような懐疑から、『ビジネスモデルもそれほど重要ではない』という見解も散見されるようになった。果たしてこれは適切であろうか。

 本特講は講義形式ではなく、基本的な紹介、説明及び視点の提示以外、主に質疑応答やディスカッションを通じて講義のポイントについて共に考えていく。と同時に、受講者に1回の調査発表をしてもらう。」

 院生各位の調査研究によるプレゼンテーションは、この「1回の調査発表」に当たるものであるが、日々所属先での実務などに呑み込まれそうに忙しく取り組みながらも、毎年、真剣に事例を調べ、分析や整理を行い、ポイントをつかんで資料を作成し、発表において私見を述べる院生達の姿に出会うと、心から評価したくなる。

 コンテンツベンチャーのビジネスモデルについて発表した20代後半の院生は地方企業の東京支社に勤めており、地方から出社しては毎日の営業業務をこなしているという。自社モデルを題材にした発表は履修者向けのプロモーションをしているようで迫力を感じる。くら寿司のビジネスモデルを聞くと、さまざまなシステムが構築されていることによる優位性が明白になったが、「もしかしてこの優れたシステムを持つくら寿司は既に特許を取っているのではないか」と筆者が確認すると、特許業務に従事されている院生がすぐ検索し、「付与された特許は何件、出願中の特許は何件」と有難く即答してくれて、みんなが「なるほど」と納得した。

 Think of White Space 〜Business model of NICONICODOUGA〜について発表した院生は内容もそのPPTの作成テクニックも高評価を受け、「東大関連事例」や「グリーンエネルギーのビジネスモデル」の事例は「とくに公益性等を考慮したビジネスモデル」の提起としては意味深いものと感じた。前回の発表で示された「ゼイリンのビジネスモデル」の事例も、他社にない強みをどのように構築したか、各院生の記憶に残っているであろう。

 世の中には、類型化しきれないほど多彩なビジネスモデルが存在しているし、時代の流れに沿って変身してゆくものであろう。顧客にとって未解決の課題とは何かについて発見し、見えない価値をどのように創出していくかが重要となることを、改めて実感してもらった一時ともいえよう。

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