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 特別寄稿  イベント

− BMA 2016年 春季シンポジウム・ハイライト −


 基調講演、ビジネスモデル対談、
第4回日本ビジネスモデル大賞、前会長・代表幹事への御礼
BMA 2.0 が目指すもの等





文: 張 輝

 2016年4月23日、快晴。午後1時、産学各界から150名を超えた参加者が春風の吹きぬける東京大学伊藤国際学術センターに集結し、創設15周年にあたるビジネスモデル学会2016年春季シンポジウム「ビジネスモデル、その最前線と向かうところ」の開催を待った。

 冒頭、ビジネスモデル学会新会長に就任された平野正雄氏(早稲田大学教授)は「ビジネスモデル学会の目指すもの」を題とした開会挨拶。「ビジネスモデル学会は、先端的な知の概念であり、かつビジネス現場で求められている新たな経営の思考法であるビジネスモデルを探索し、理解を深め、その成果を発信していく新しい学会として、ビジネスの最前線とアカデミアの最新理論の結合を重視しており、そのために第一線で活躍されているプロフェショナルやビジネスパースン、そしてアカデミアなど多様なメンバーが集まって一緒に探求する」と、平野会長が第1回春季シンポジウムの第一声を発した。

 
 左:平野正雄会長  右:会場ワンシーン

 基調講演1「ビジネスモデル最前線」

 基調講演の幕を開いたのは早稲田大学教授の根来龍之氏で、テーマは「ビジネスモデル最前線」である。氏はわが国におけるビジネスモデル論の代表的なアカデミアの1人として、ビジネス現場の激動も踏まえながら論じ続けてきたが、今回は「レイヤー構造化とシェアリング」を副題にして、自動車のレイヤー構造化の進展やシェアリングサービスの普及などを素材に、「つながる経済」による産業生態系の変化にも触れながら、デジタル化は、モジュール化、ソフトウェア化、ネットワーク化をもたらし、これは産業のレイヤー構造化をもたらす。スマホの浸透による「モジュール化、ソフトウェア化、ネットワーク化」の結果、シェアリングサービスが生まれ、その成功には、信頼と信用の実現をはかるビジネスモデル構築が必要だと力強く結ぶ。
  根来龍之氏 

 ビジネスモデル対談1「AI、BigDataはビジネスをどう変えるか」 

 続いて、ビジネスモデル対談1として、Yahoo!Japan CSOの安宅和人氏 vs. DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐文夫氏が登場し、「AI、BigDataはビジネスをどう変えるか」についてのトークである。急速に実用化が進み出し、経営に「創造」と「破壊」をもたらし、新たなビジネス革命を引き起こしつつあるとも言われる人工知能(AI)が、いったいどこまでできるのか、何ができないのか、ビジネス環境にはどのような影響が生じるのかに関し、AIとデータがビジネスにもたらす5つの変化や、経営リソースの変化、現在・2020年・2030前後というフェーズの変化という中で、人間の持つべき能力や妄想などについて、両氏が熱論し、ビジネスへの影響を示唆した。実に痛快なトークは時々会場からの歓声を誘った。

 左:安宅和人氏  右:岩佐文夫氏

 ビジネスモデル対談2「今、シリコンバレーから見えること」  

 ビジネスモデル対談2は、「今、シリコンバレーから見えること」をテーマにした、スクラムベンチャーズ代表の宮田拓弥氏 vs. 「WIRED」日本版編集長の若林恵氏であった。いつになってもシリコンバレーの動きに気になる人は多いが、スクラムベンチャーズはシリコンバレーに起業家出身の日本人・宮田拓弥氏が運営するファンドで、2013年設立以降、スタートアップ26社に投資をしてきたという。なぜ日本を離れてシリコンバレーに行ったのか、何を基準に将来性のある起業家などを判断し、投資や支援を展開しているのか、スクラムベンチャーズの基本戦略とは何なのか、何を視座にTrending Now と Near Future を見ているのか、ベンチャービジネスモデルへのエネルギシューを感じさせられる熱いトークだった。

 左:宮田拓弥氏  右:若林恵氏

 基調講演2「サービス・ドミナント・ロジック:価値共創の未来」
  この後、一橋大学大学院准教授の藤川佳則氏が登壇し、「サービス・ドミナント・ロジック:価値共創の未来」を題とする、基調講演2である。アジェンダは、1.TREND|いま地球規模・数十年単位で起きていること、2.PERSPECTIVE|サービスマネジメント むかし・いま・みらい、3.DISCUSSION|「資源ベースの顧客論」に向けて、という構成であるが、氏は一瀉千里のような口調でスピーチされて、時間の経過を感じない。比較的に若い学問領域である「サービスマネジメント」を専門とする氏は、マクロ的な視座とミクロ的な視点を統合的に持ちつつ、動学的アプローチを持った史的な観察も含めて、なぜいま、また今後もサービスがますます重要なのか、なぜ「希少資源」マネジメントから「余剰資源」マネジメントへとシフトするのか、ビジネスモデル構築の原点となる「顧客価値」をどう創出するのか、その語る迫力は忘れられない。
藤川佳則氏   

 ビジネスモデル対談3「バイオベンチャーの新たなビジネスモデル」  

 続いて、ビジネスモデル対談3として、「バイオベンチャーの新たなビジネスモデル」をテーマに、REMIGES Ventures マネージングディレクターの稲葉太郎氏 vs. UTECパートナーの片田江舞子氏が登場された。ITベンチャーよりなぜか分かりづらいバイオベンチャーではあるが、稲葉太郎氏はショットスピーチで、まずIT企業や環境技術企業に比べたバイオベンチャーの特徴や課題、とりわけ収益モデルなどについて、分かりやすい説明をされた。知財(特許)価値は創業当初の収益数字に表れないことや、ベンチャーなのになぜ大手と勝負できるのか、新しく生まれつつあるビジネスモデルやバイオベンチャーの近未来のビジネスモデルとは、今後もますます必要と求められているバイオビジネスモデルの時流にはまことに興味深い。

 左:稲葉太郎氏  右:片田江舞子氏

 ところで、稲葉太郎氏と片田江舞子氏の対談をもって、第一部のプログラムが終了。場所を移動して、第二部の懇親会に入る。ビジネスモデル学会理事で東京大学教授の元橋一之氏に乾杯の音頭を取って頂いた後、100名を超える参加者が一気に歓談タイムへ。はじめての参加者も、半年か一年というひさしぶりの再会者も、名刺交換や近況交換したり、第一部のプログラムについての感想を交わしたり、一部の講演者と熱論に入ったりするムードになった。

 
 元橋一之氏
 第4回日本ビジネスモデル大賞

 19時半頃か、学会運営委員長の淡輪敬三氏より、第4回「日本ビジネスモデル大賞」を発表。同大賞は、ビジネスモデル学会が日本経済の活性化に資すべく、優れたビジネスモデルで成功を収め、さらなる成長が期待できる企業を表彰する大賞として2013年度より創設した。また、同大賞は、「独創性」、「持続性」、「共感性」の3つの観点から評価できるビジネスモデルを構築し、近年特に優れた業績を達成されている企業を対象として、当学会の専門委員会とアドバイザーにて審査を行っている。

 その結果、第4回に当たる今年の同賞受賞企業にリンカーズ株式会社を選定した。同社前田佳宏社長は受賞者として挨拶し、日本のものづくりの復活を目指して、ビジネスマッチングに粘り強く取り込み、夢を持つ挑戦力や独特なビジネスモデルを創り出す日々を披露した。ちょうど、東京テレビが関連の番組を制作しているところで、取材カメラも来場された。

 
 左:東京テレビ取材中  右:授賞式ワンシーン
 前会長、前代表幹事へのお礼

 みなさんが再び懇談に入ったその後、シンポジウムの広告紙に明示されていないサプライズが出現。退任される松島克守前会長、中谷幸俊前代表幹事へのお礼のタイムである。松島前会長は2000年10月1日に、日本においてもビジネスモデル論の風が吹き始めたところ、先見性をもって産官学各界キーマンの方々を結集させ、ビジネスモデル学会を創設した。以来、年に二回(春季と秋季)の大会、年に一度の海外コンベンション、二ヵ月一度のイブニングセッション、年に一度のビジネスモデル大賞、不定期の大使館プログラム、ビジネスモデルの情報発信など、次々とビジネスモデル学会としての独特な活動を展開してきた。中谷前代表幹事は松島前会長を精力的に補佐し、多彩なネットワークを活かしつつ活躍された。

 
 左:松島克守前会長ご夫妻  右:中谷幸俊前代表幹事ご夫妻

 代表幹事による学会紹介

 時間はあっという間に過ぎていき、懇親会もそろそろ閉幕に近づいた。代表幹事の西田治子氏は松島前会長、中谷前代表幹事の功績を称えながら、学会の紹介に上がった。平野新会長の下、いままで春季大会と秋季大会はあったが、今回から、春季シンポジウム、秋季論文発表というように改めて実行していくと同時に、確定となったイブニングセッションの内容(5月「マーケティングのイノベーション(仮)」、6月「グローバルM&Aと企業変革(仮)」)の内容や、9月に全面的にリニューアルするBMAジャーナルの原稿募集などについても具体的に案内した。「ビジネスモデル2.0、ついにスタート」と、松島前会長がコメントされたように、次々と革新をひき起こす学会としてのビジネスモデル学会の新たな地平線が見えて来た。

 
 左:西田治子氏  右:一部参加者の方々

 参加者からの声(部分)

 夜8時半、懇親会もついに閉幕。秋季大会で再度会おう、みなさんは誓った。翌日、参加者からは色々な喜ぶ声が届いてきた。

‐「昨日のビジネスモデル学会がすごくおもしろかった。豪華登壇者の刺激的なトークを一日でまとめて聞けて、憧れの人や会いたかった人に会えて、とても得した気分です。」

‐「AI、ビッグデータ、IoTやシェアリングエコノミー、ブロックチェーンなどの登場で、これから従来型産業がディスラプトされ、何が変わり、それについて行くには何をすべきかの考え方が参考になりました。」

‐「初参加@東大、超面白かった。やっぱりITとサービスを中心とした産業のダイナミズムは凄い。知的刺激を大いにもらいました。」

‐「本当に楽しく素晴らしいシンポジウムでした。あまりにも楽しかったので、早速入会の手続をとりたいと思っております。」

 参加者は平野会長と懇談中

注記: 筆者はBMAジャーナル編集長



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